ABA(応用行動分析)は、人の行動を個人内の問題とせず環境との相互作用の結果として捉えることで、新しい行動の獲得や問題行動の解決などに応用していく理論と実践の体系です。1930年代にスキナー(B.F.Skinner)によって行動分析学が生み出され、現代ではその応用(行動分析)として教育や医療、スポーツ、経営など様々な分野で大きな効果を上げています。
発達障害の分野では、アメリカのロヴァース博士の研究が現代ABAの源流です。週40時間の訓練を行った自閉症児19人中9人が普通学校へ進学し、ほぼ全員が大人になっても一般社会の中で生活しています。それまで施設での生活を余儀なくされていた自閉症者の世界を大きく変えることになった実践的かつ歴史的な研究で、その後のフォローアップ研究でもその効果が確認されています。アメリカでは自閉症児の療育として保険が適用される療法です。
先ずは子どものその行動を引き起こす原因が以下の4つのどれに当たるかを見分けます。 必ずどれかに、あるいは複数の原因に該当します。
『~がほしい・したい!』
『~したくない・されたくない!』
『こっちを見て!かまって!』
『なんだか楽しい・気がまぎれる!』
子どもの行動の原因を見つけ、それに合わせて対応していきます。その際に使われるのが「ABC分析」です。
ABCは、この単語の3つの頭文字から取られています。つまり、「Aのとき(場所や人、環境など)、Bをしたら、Cになった」という形です。これに当てはめて考えます。
A:おもちゃ売り場を子供と通り過ぎようとしたら、B:突然、かんしゃくを起こして泣き叫び始めた。C:(子供は)おもちゃを買ってもらった。
この例では、おもちゃが欲しくてかんしゃくを起こしたという事が分かります。
行動前の状況
行動
行動の結果
「叱らずに褒めて育てる」のがABAです。そのためには育てる側(周りの人)にも技術が必要となります。 ABAでは、下記の方法を使ってトレーニングを行う際に記録を取り、客観的な資料を作成し指導に反映させるという特徴を持っています。
ある行動の直後に、その子にとって良いことがあったり、嫌なことがなくなったり状況が変化します・・・つまり結果によってその行動が増えていくのです。増えていくことを「強化」されたといいます。子どもが望ましい行動をしたときや問題行動をしなかったとき、心を込めてたくさん褒めたりご褒美をあげたりと、お子様本人が喜ぶことをしてあげて「強化」してあげましょう。
反対に、問題行動をしたときは大声で叱ったりせず、その行動を無言で止めさせたり、取り合わないようにしたり、それまであげていたご褒美を一時的に無くしたりすること等で、その行動を「消去」していきます。この時は、子どもに気を配り安全に十分に配慮しながら、目を見たり声掛けや抱っこなどをせず、静かに子どもが落ち着くのを待ちます。先の例であれば、かんしゃくを起こして泣き叫んでも、取り合わずに無言でかんしゃくが収まるのを待つことが「消去」にあたります。
問題行動以外の望ましい行動などを「強化」することで増やしていきます。これにより、間接的に問題行動を減らしていきます。「消去」や次に述べる「先行条件操作」と併せて使うことで大きな効果を生みます。先の例で言えば、おもちゃ売り場に差し掛かる前に、「泣かないでいい子にしていたらお菓子を一つ買ってあげるよ。」などと声をかけておいて、泣かずに通り過ぎれたら沢山褒めてお菓子を買ってあげるなどの方法です。
問題行動が起こりにくくなるように、予め物理的、時間的な環境を調整しておきます。特定のものがパニックや癇癪を引き起こすのなら、それが目につかないように取り除いたり隠したりしておきます。